№4903 「安輝素日記」読者選歌その11

     「安輝素日記」読者選歌その11

平和な時代を生きてきたんだこの俺に孤独死とふ選択肢(チヨイス)残れば

安楽死をとたのめば看護師西さんが朝つぱらから大笑ひせり

看護師の西さん美人にあらねどもてきぱきしやきしやき心和ます

黒田さんガンにはきつとかかりません西さん勘で我を励ます

手帳にぞ書きこみし短歌(うた)読みをれば写経ですか問はれてしまふ

四十七われは短歌を作り初(そ)め寺山修司は逝きにけるかも

十階の病窓(まど)から見ゆる朝の景酢色の天地を鴉が泳ぐ

瓶詰めにされた胆石(いし)どもレアアースに似た色放ちて自己主張せり

病院の一日(ひとひ)の案外短くて過去(すぎゆき)悔やめば未来(さき)は眠たし

捨て続け来し柵(しがらみ)の亡骸か点滴台をがらがらと牽く

病床の我を射的にする如く音なき音たて雨粒弾けつ

病棟の夜の黙(しじま)を置きざりとなして台風通過するらし

〝らむ〟といふ美(は)しき助動詞在ることを教へくれにき『一握の砂』

喧嘩して仲直りして喧嘩してけふ仲直りして永久(とは)に別れむ

朗らかに夫恋ふるひと職場にてりんだうの花束(はな)抱きて帰りぬ

幼児(をさなご)をオッサンと呼ぶ母の背におつさんすがりてコアラとなりぬ

嵯峨三智子生きる力のか繊くて濡れてもぬれても温きあめふる

私(わたくし)の会ひたいひとは私を知らぬまま皆病んで逝きたり

イヴの夜雪降ることの叶はずに行方知れずのサンタとトナカイ

あざやかに五才(いつつ)の頃の泣き顔を思ひ泛べてひとは逝くらむ

恐らくは荷風のごとく血を吐きて伏して死すらむ看取る者なく

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