№3697 リア王

 憎たらしいことに英語のできる妻が、youtubeで外国の芝居を検索してはタダ見している。これは何らかの著作権侵害になるのではないかと思うのだが、あいにくと欧米にはデジタルコンテンツ法というものがあり、映画のソフトや舞台を録画したものをネットにアップしてもアップした当人にはお咎めなしだそうで、実に羨ましい。日本では、ビデオについてきた特典映像を流すだけで削除されてしまうわけであり、これは文化の自殺であると僕は思っている。わずかな著作権収入を惜しがって、貴重な映像を人々が見る機会を奪うとはもはや暴力である。

 で、何が言いたいかというと、妻はイギリスのなんとかいう偉い劇団が上演した「リア王」の舞台の録画を見ていたのである。もちろん字幕もなんもないが、リア王にはまって半世紀の妻は日本語の台本をほぼ暗記しているので、今どこでどんな台詞を言っているかにまったく困らないのである。僕も脇から見ていて思ったが、昔からこの芝居は、王様の三人の娘の上の二人は極悪非道の不孝娘で親父を虐待してけしからん。という筋だと思ってたが、よく考えたらこの王様がどうしようもない老害である。引退して王位以外の全てを譲ったくせに娘の家に100人の兵士と移り住んで食うわ飲むわ兵士はセクハラ放題だわ。僕が娘だったら嵐の荒野に蹴り出すわ。と思ったが実際劇中でリア王はそういう目にあうのであった。妻の見ていたバージョンが、いかにもそうしたクソじじいとしてリア王を描いていて、ひょっとしてシェイクスピアの時代にも、耄碌したクソ両親とその介護をしなくてはいけない子どもたちの苦労ってのが社会問題だったのかもなあ。と思った次第である。

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