№3593 黒猫(ネコ)と背後霊

      黒猫(ネコ)と背後霊      黒田英雄


ゴキブリを嫌嫌殺めた朝温くスポーツドリンクすぐ劣化する

薄墨色の空に白き陽の射してホラン千秋が好きになつたよ

フクコウゴリン復興の足引っ張りてまほろば自虐のごとき豪雨「あめ」落つ

ハンランを漢字でしつかり氾濫と覚えて夜空(そら)にぽつかり満月

八十歳(はちじふ)の被災者をみなの声漏れ来もう長生きはしたくないよと

子供孝行の親でありたい80歳(はちじふ)でだから逝きたいママさん真剣(マジ)に

陵墓(みささぎ)の閑けさなりや紀伊国屋詩歌売場に人影もなく

わづかなる短歌(うた)のスペースびつしりと啄木ばかりが威張つて並ぶ

羅布泊(ロプノール)さながら聳え紅テントたしかなれども杳き革命

西口公園裏へ抜ければゆくりなく「十二社温泉」しづかに湧けり

黒き湯の戦ぐがごとくさざめいて新宿(ジュク)の底(そこひ)にひとり憩ひつ

宮下順子黒き湯舟に背後から突きて果てたしまひるまの幻想(ゆめ)

自らを誇示する如く若者が職安通りをゆうるり渡る

風のやうな人だと云はれたことがある隙間より入り隙間より去る

詠人知らず否、読人在らずぞ読者人口実数五千!

自が頂の白さをみなに告げられて背後霊ですとほほゑみ返す

ブランコの高くなりゆくときふいに井上良子の鳩尾になる

母に肖しひとに遂にし会へざるまま冷気たゆたふ弥生夜(よ)逝かむ

あと幾度桜の季(とき)に眠れるかぬいぐるみの黒猫(ネコ)ゆうるり抱いて

注・17首目は発表時のものを推敲しました。

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