№3573 今は大林宣彦

 僕は現在、366本の旧作邦画のソフトを所蔵している。その日その日によって、なぜその映画を観たいか、理由はちゃんとある。体調万全かつ怒りに燃える日は、大島渚監督作品。女の生々しいリアリズムに裏打ちされた恋愛映画な気分の日は成瀬巳喜男。社会派映画を観て人間世界の矛盾に憤りたいときは溝口健二。清らかな涙を叙情に浸りたい日は木下恵介。情熱的な女のパッションを観たい日は増村保造と吉村公三郎(要するに京マチ子だ)。ほかほか、僕が鑑賞したい映画監督は山ほどいるが、今現在のマイブームが誰かと言うと、もうズブズブで大林宣彦だ。

 彼の作品を観るときの僕は、精神的に弱くなっていることを自覚する。今、COPDで苦しい真っ最中だ。そんなときに、心に染み入る映画は大林宣彦の監督作品なのだ。大林作品は、亡くなった人や物たちへの慈しみの心に満ちている。ヒューマニズムに溢れており、それが彼の、映画を作り続ける永遠のテーマなのだろう。今、弱りきった僕の体に、彼の映画が本当にしみてくる。「時をかける少女」に、再び感動しまくっている。

“愛の実りは海の底
 空のため息星くづが
 ヒトデと出会って億万年”

 この劇中歌があるからこそ、この映画はいい。この歌がなかったら、この映画の魅力は半減しただろう。この歌を歌うときだけが、主人公二人の、消されなかった記憶のリアルな時間なのだ。本当に切ない。そう、切なさこそが映画の最大の魅力なのだ。作曲は大林宣彦だ。そう言えば彼は、盟友高林陽一の「本陣殺人事件」のメインテーマを作曲している。大林宣彦というのは、作曲だけでも相当な才能があるのではないのか。

 私の体はCOPDで弱り切っている。だから、大林監督のヒューマニズムに飢えているのだろう。師走は、彼の作品に浸ることになるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=oLC1fZJ1Lgs

この記事へのコメント