№3521 「塔」八月号・陽の当たらない名歌選2~餓死~

      「塔」八月号・陽の当たらない名歌選2

くらげには気持ちがあると主張する子らを照らして月がかがやく 楠 藍
砂場から足跡だけが旅に出て滅びゆくもの見たのでしょうか 梅津かなで
帰りゆく後姿を焼きつけてそのままにする眼鏡のくもり 田島千代

つとつとと雨降り止まず つととつと今日は泣き止む必要もなし 亀海夏子
夫のまえ言荒く子を叱りおり だれかを責めたい夕闇にいる 松本志季
錆色の滲んだやうな夕焼けが今日の私には生臭くもり 長澤ゆり子
病棟の白照らす火災報知器の赤そういえば死を見ていない 梅津かなで
裸身にてぼくらの海を予定したブルーシートできみから乾く 梅津かなで
分析のできない思いは澱となり上澄みだけが揺れているなり 黒木浩子
耳うちは清まだは濁くちびるがふとふれそうな距離のはざまに 高松紗都子
干潟歩くイソシギの二羽エリザベス・テーラーほんとにきれいだったね 森川たみ子
憧れは白鳥姫より黒鳥の王子をだます悪魔の娘 高山葉月
非通知の電話いく度もかかりくるかのアンケートに答えたる後 天野惟光
他人(ひと)が怒る真っ赤な頬をきれいだと眺めておりぬさびしき日暮れ 福西直美
ポジティブな話の輪から薄く逸れ足もとに咲くたんぽぽを見る 落合優子
深呼吸する時は先ず息を吐く そういう決まり知らずに居たり 浅野次子
大正の終わりに生まれし祖母の姉祖母の白髪を染めて怒れり 逢坂みずき
戦闘死を遥かに凌ぐ餓死病死海没死とふ「日本軍兵士」は近刊 鳥山かずき
耳の奥の痛さ 教員をしていれば人を諦めるということも多く 川上まなみ
我が身から抜けしものあり夕まぐれ我が影を鬼に踏まれたるのち 加茂直樹
伸びすぎたなづなのやうに襟元に見え隠れする白いスカーフ 新井 蜜
みどりごを背負いて杖をついてゆく母親あれば皆が見守る 石井暁子
若者は勇気を出して諌むべし権威をかざす老人非行 大久保茂男
憎しみを力に変し時去りて青空にただ吸ひ込まれたり 峠 秋太郎
帯文も歌集の一部であることを奪い取られて図書館蔵書 みちくさ

      一首評

戦闘死を遥かに凌ぐ餓死病死海没死とふ「日本軍兵士」は近刊 鳥山かずき

 この歌には、作品として見たとき、未熟な点や、練りこまれていない点があるかもしれない。しかし僕にとって短歌というのは、「どのように詠うか」ではなく、「何を詠うか」なのである。その点においてこの歌は優れている。第二次世界大戦における日本軍兵士の死因は、その多くが、戦闘死ではなく、日本軍の無為無策によってもたらされた餓死、病死であったという。また、そんなにも、百姓や商人や文学者や映画監督や、よっぽど世の中の役に立ったであろう人々を無駄に死なせておいて、靖国神社で軍神と崇め奉るという侮辱をこいて恥じないのが戦後日本である。靖国に参拝する日本人は、すべてわかった上でやってる冗談きつい人間以外、全員バカである。靖国神社が明日爆破されたとしたら、誰がやったにせよ俺はそいつに心の中で文化勲章を与えるであろう。東条英機のごときは、何度でも生き返らせ、何度でも絞首刑にしてついでに池袋サンシャインの前で野ざらしにしてくれる。沢村栄治、丸山定夫、山中貞雄etc、貴重な人材を徴集して無駄死にさせやがった。その戦犯東条を祀っているのが靖国神社だ。誰がこんな神社に参拝するかぼけ。この神社に参拝する日本人どものバカさ加減に俺は呆れる。大事な息子たちを、まったくなんの意味もなかった戦争で、無残に殺されたことになんの疑問も持ってないどころかありがたいと思っておるのだ。こんなバカ日本人と、その後裔が支えているのが靖国神社信仰なのだ。

 元々靖国神社は、官軍の兵士の霊を鎮めるためのものであった。官軍の長たる長州人の俺様は、もしもそのままの靖国であってくれるのなら毎年参拝に行ったって構わない。しかるに、おろかな東北閥の中でもとりわけおろかな東条英機を祀るに至って、俺様にとって靖国神社は、日本の夜明けにおいて担った長州の業績と開明までをも否定する愚劣な装置に成り下がった・

 靖国神社は本来、倒幕という偉業をなした長州人のための物であった。それが、野蛮でアホで役立たずで、日本を破滅に追い込んだ東条を祀るとは、ふざけとんのか埋めるぞコラ。ちなみに、現代において東条に相当する人物は、森喜朗と石原慎太郎である。来年のオリンピックの結果次第では、この二人のために、池袋サンシャインに新たな巣鴨プリズンと絞首台を用意しといたがいいかもしれない。

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