№3125 頂

                 項      黒田英雄

ながいながあい睦月だつたよ日月の疾く過ぎゆくは幸なる証

日本的笑芸のララバイ言の葉の波にたゆたい落語に籠もる

怒らなくなつたら人間(ひと)はしまいですけさのストレス少し愉しむ

分別も度重なれば臆病となり果てひとは無事に老いゆく

狂熱の基地外五輪を境とし日の本何処(いづこ)に向つて堕つるや

これはもうアナクロニズムひたすらに安部政権下の改憲危険

上半身裸で叫く男ゆく暮るることなき歌舞伎町ゆく

若者の首を押へてパトカーに捻ぢ込む警官(ポリス)の意味不明の微笑(ゑみ)

雑踏を手ぶらで歩く自由さとぎこちなさとを愉しみ独(ひと)り

ひよつとして熱中症かも壁に這ふゴキブリ愛しとふらつき見れば

よそゆきのかほした短歌(うた)のあまた載る短歌総合誌の総合って何?

液晶テレビのプロセニアムの下手隅に霊魂のごとき自(し)が顔映る

おめおめと六十歳(ろくじふ)過ぎて生きちよるか亡父(ちち)の声するそのこゑ知らねど

マスクしてとぼとぼ歩く曇り日に侍ジャパンと呼べば恥かし

ニツポンのみ盛り上りたる愚かさよWBC?ホワットザット!!

私には一生とけぬ謎ならむ孫可愛ゆいと笑まふその貌(かほ)

かけ流しの硫黄源泉目を閉ぢて浸れば亡母(はは)の頂泛びつ

三月の陽を浴び信号待つまひる木綿なやうなをんなに逢ひたい

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